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August 29, 2010

映画評 ヒックとドラゴン

お勧め度 ★ ★ ★ ★


とてもよくできた映画だ。

惜しむらくはドラゴンの生態だろうか?なぜそのような種類があるのか?
ドラゴン同士は共存しているのか?大きいボスキャラドラゴンは一体
なんなのか?その辺がよくわからない。ジャック・ヴァンスの「竜を駆る種族」や
アン・マキャフリィの「パーンの竜騎士」シリーズでも竜という生き物が
しっかり描かれているが、この話はそれがなかった。

また主人公はバイキングだが、ということは舞台は1,000年ほど前か?
舞台設定にリアリティがどうなのだろう?あと、このバイキング、
竜と戦ってばかりで、どうやって暮らしを立てているのかもわからない。

映像面ではやはり巨大竜の扱いがいまいち。あそこまで大きければ
羽は羽ばたくのではなく、滑空するために広げてバランスを取るのが
せいぜいだろう。それをああまで機動性を高めるのは非現実的が、
竜だけど。

主人公はHiccupという名前でその名前だけでさえないキャラという
設定がわかるのだが、字幕版では特に説明がなかった。日本語版
では大丈夫だろうか?

この映画のとりわけすばらしい点はラストシーンだ。結果として主人公が
とらえた竜と主人公、We two are one.という存在になれたわけだ。

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August 21, 2010

映画評 借りぐらしのアリエッティ

お勧め度 ★ ★ ★

見終えた後、近所のシートの男の二人組が、「まぁまぁまぁ、優しい映画でしたな」と感想を言って
いた。うまい表現だ。

きわめてノンポリで、

なんというか佳作だ。佳作と凡作の境目はどこにあるのだろう。
かつてのような主張があるわけでなく、物語も映画も淡々と始まり淡々と
進み淡々と終わる。人間側のエゴとか主題として見ようによっては言え
ないこともないが、色は薄い。

正直なところをいうと難解なフランス映画ではあるまいに、もう少し毒気
ないしドラマをドラマとして感じさせるような盛り上がりとかを設けてもらい
たかったものだ。

映像はあいかわらず美しいが進歩した感じはない。いつもの絵だ。
舞台は比較的高度のある避暑地だろうか?
日差しは夏というのにやわらかく、汗をかく感じはない。
遠くにツツジらしきものが見え、近くに芥子の花が咲き、BGMで
ヒグラシが聞こえる。残念ながらそんな季節は存在しない。
非常に非現実的だ。

そのくせ、「人間が何人いるか知っている?67億人だよ」と
現実べたべたな台詞がある。メルヘンでも現実でもなく、
ただリアルさの欠けた風景が映し出される。最後の場面になると、
舞台は軽井沢でもなく、単なる郊外の高台であったことが明らかに
される。だったらもう少ししっかりとした景色の作り込みを
求めたいものだ。

時代設定も同様。最初に「30年前、僕は夏の一時期を・・・」
で始まり古いベンツが現れるため、現在は現代なのかと思う。
舞台の擬洋風な建物もその意識を強くする。ところが、
宅配便が届き、携帯を使用されるのを見るにつけ、どうやら
30年前が現代だと気づく。やたら懐古趣味で変な家だ。
違和感のぬぐえないアンバランスである。

そして、映画中に今の僕の姿や情景は現れない。いっそ、この僕が
腐海に立っているくらいの映像を最後に示した方がカルト的な
人気がでたのではないかと思ったりもする。

また、生き物のサイズというのは大切だ。ここに出てくるこびと
くらい小さければ静電気で服を着るのも大変だろう。犬が象の
大きさになれば象のような骨格になってしまうのと同様、
手のひらサイズの人間なら人間の形をしているのは生物的に
不自然だ。そんなことを考えているとこれまた本編のリアルの
なさに思い至ってしまう。人形が動くことよりも、こちらの方が
リアルに感じられないのは我ながら不思議だ。

声優の出来も感情移入の妨げだ。特に、お手伝い役と主人公
の母親役の出来の悪さは特筆もので、本当に聞くに耐えない。
ジブリはなぜ、芸能人の声優起用を続けるのだろう。絵や音楽を
作っている人間は腹立たしく感じないのだろうか?
作品のクオリティを毀損している。

そんなこんなで、ここ最近のジブリ作と同様、煮えきらない
出来の本作である。トイ・ストーリーとほぼ連続して鑑賞し、
両者の相対的な位置関係が自分の中でより明確になった。
ここのところのジブリには、晩年を迎えつつあるワンマンオーナーが
経営する中小企業のような悲哀と苦境を感じる。

最後に「借りぐらし」について。
借りていない。盗んでいるだけである。醜悪なばあさんの認識が
正しい。なので、アリエッティが「借り」に行くのだが、音だけ聞くと、
自分は頭の中で「狩りに行く」に変換してしまった。

ジブリ、いつまで過去の遺産で食っていくのか??

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August 15, 2010

映画評 トイ・ストーリー3

お勧め度 ★ ★ ★ ★ ★
トイ・ストーリー3部作の最後。
見事にまとめています。

舞台はアンディが17歳になり、大学へ通う時期。大学が遠くにあるようで、
アンディは引っ越しの荷物をまとめている。もちろん、かつて遊んだ人形たち
は一緒についていくことはかなわない可能性が高い。彼の運命の分かれ道
が眼前に控えている。

 ①アンディに引っ越し荷物として選ばれる。
 ②同伴はかなわずとも、屋根裏部屋に放り込まれ、うまくいけばアンディ
  の子供などと遊んでもらえる。
 ③保育園など寄付される。この場合、おもちゃとしては本望であるが、
  アンディのおもちゃとしては微妙である。
 ④捨てられる

 おもちゃならば、だれしもがやがて直面する、持ち主との関係変化。
 チョットした手違いで、危うく捨てられそうになったおもちゃたちは、
保育園で現役でい続けることを選ぶ。一方、アンディは運良く大学行き
の切符を手に入れたので、持ち主の元に戻ろうと主張し、バズ達と別れる。

保育園に行ったバズ達はおもちゃから熱烈な歓迎を受けるが、彼らは
年少組に配属となったため、過酷な扱いを受ける。待遇改善を求める
バズだが、保育園はストロベリーの匂いする熊ぬいぐるみの支
配する場所であり、彼らは自らの保身のためにバズ達を年少組から異動
させない。
このままでは体が持たない!

 さて、アンディは保育園の実態を知り、バズ達を保育園から救出しようと
保育園に向かう。そこでアンディ達は熊と戦うことになるわけだ。

トイ・ストーリーは、
以前より大人達のためのアニメと主張している私ですが、今回もまさしく
その王道を行っている。
今回描かれているのはおもちゃ自身のアイデンティティだ。
彼らは、アンディにとってはすでに一緒に遊ぶ対象ではない。必要と
されなくなってしまったのだ。
第二作では、アンディのおもちゃとして遊ばれることを選んだ彼らだが、
そのアンディから必要とされなくなった場合、自らをどう処せばいいのか?
おもちゃとして遊ばれることを願うのか、それともアンディの持ち物として
運命を受け入れるのか?

この話のよくできている所は、すべての生き方を肯定しているところである。
第二の人生として保育園で不特定多数と遊ぶもよし、再び誰かのもの
になるのもよし。各人の選んだ生き方を強く肯定している。この姿は
自らの立場とだぶらせて中年のおっさんにも強く訴求する点だろう。

カウボーイ人形のエディが仲間と残ると決める決断も丁寧に描かれて
いる。熊との死闘の末に一蓮托生として仲間と手を取り合い、死を
受容するエディ。この時、彼はこの仲間と一緒にいることを選んだの
ではないか。そして映画の最後、彼はアンディに向かって”So Long.”
とつぶやく。もう会うことはないとわかっているのだ。

 アンディも大 学に連れていくはずだったエディを小さな女の子に
あげるときにこれが最後だとわかる。出発までのつかの間、女の子と
一緒に遊ぶアンディ。かつてのように夢中になることはないのだろうが、
それでもお互いに別れを惜しむ刹那の連続が時間の光の変化ととも
になんとも美しい。

本作は3Dになってるが、なにが飛び出るわけではない。映像も
1作目からさほど変化ない。
最初から完成された作品であったし、3部作として見事な大団円を
迎えたシリーズである。
個人的には2>3>1だけど、本作ももちろん傑作・快作。

http://www.disney.co.jp/toystory/

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August 01, 2010

映画評 告白

お勧め度 ★ ★ ★ ★

ふつう良い映画はまた見たくなるものだし、気に入ればDVDなどで手元に
置きたくなるものだ。しかし、この映画は、その良さにも関わらず、もう一回
見る気にはなぜかならない。

この映画のなにが良いかというと、脚本だ。
独白形式で重ねていくのだが、その時、前の独白よりも少しずつ、事実を
見せながら、もしくは新しい事実を提示しながら見せていくのだ。そして
全体が不整合なく構成されている。
見事。

聞くところによると本もそのような構成だそうだ。であれば、うまく映像化した
のだろう。

話の筋を少し具体的に書くと、
中学校の先生が自分の子供が水死する。しかし、それは水死ではなく生徒
それもクラスメイトによる他殺だったことに彼女は気づく。少年法で守られて
いる人間に対して彼女は彼女なりの方法で復讐を企図していく、というもの
だ。

次に良いところは、演技が良い。松たか子。個人的にはこれまで、あまり評価
していなかった女優でもありなんとなく悔しい気分になってしまうのだが、
うまい。子役もそれぞれたいしたものだ。

演出とか音楽はあまり印象に残らなかった。いや、音楽はなんか場違いな
音楽が流れていたりして、印象に残ったのだが、忘れてしまった。

見ていると、最後に
お母さんは結局爆破されてしまったのだろうか、と考えたくなる。
「関係ない人を巻き込むな」という松たか子の主張からすると、研究室で
爆発させるのは母親は関係ない人だとはいえないとしても、他の人への
危険性が高すぎる。とはいえ、彼女は壊れているので、それくらい
やってもおかしくないような気がするし、それをしないとこの場合は復讐に
ならないような気もする。

うん、ようわからん。
観おわったあと、いろいろ考えるのは、やはりいい映画なのだろう。

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