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June 08, 2009

映画評 スタートレック

お勧め度 ★ ★

 自分は日本ではあまりいないと思われるトレッキーの1人である。
しかし、スタートレック全般が好きなわけではなく、DS9を偏愛する
トレッキーなのである。
 
 なぜDS9を偏愛するかの理由はさておき、自分がスタートレックが
好きなわけは、それはスタートレックがアメリカのよきリベラルを体現
したドラマだからである。あれを観れば、いわゆる学生街のその時々
の主流たる思想が見て取れる。世相の半歩先を行っているのである。

 TOSではクルーの1名だった黒人はDS9ではDS9の責任者となり、
まさにオバマの先駆け。先立つこと約10年の見事さである。ちなみに
前後して放映されたボイジャーでは船長は女性で、これまたクリントン
の先駆けである。

 しかるに、本作は、新キャラではなくカークでありスポック。冷戦時代
の設定なのである。本作は全くの新しい話として展開しているので、
登場人物以外、絡むところがなく、その点では今後どうにでもなる素材
ではあるが、いかんせん登場人物の属性設定が古い。これではなか
なか時代の先取りとは行かないだろう。実際、映画はほとんどアクシ
ョン映画である。

 今となっては古色蒼然のオリジナルシリーズであるが、そのオリジ
ナルシリーズを換骨奪胎するために映画ならではの工夫もある。服装
などがそれだ。宇宙戦艦ヤマトの制服が子供心にとても格好よかった
のに今となっては、いじめに近いデザインであるように、スタートレック
の制服も今となってはあり得ないくらいにかっこうわるい。今回の映画
版では、格好の悪さは相変わらずであるが、オリジナルファンにも怒ら
れず、一方で知らないで観る人間にも違和感を軽く感じさせる程度の
微妙なデザインや素材の質感の変更を行っており、なんとも苦労が忍
ばれる。

 日本公開にあたって、最も問題なのは、観客の知識だろう。ロミュラン
とバルカンの関係について映画を観る観客のうち1割も知っているの
だろうか?最後の台詞が、スタートレックの有名な出だしとわかる観客
がどの程度いるだろうか?知らないでも楽しめる、とはいえ、アメリカ
ではこれを見る人は、ごく基礎的な知識として、ダースベーダーとルーク
が親子であるのと同じくらいの当たり前のこととして認識しているのと
では明らかな差がある。その点で、やはり日本人にとっては不親切な
映画なのである。これを大々的に宣伝する配給元は、商売ではあるか
らしょうがないが、やはりこれまた不誠実であるとも言えよう、ベースが
あって楽しめるものなのだから。そしてそのベースはターミネーターの
ように3本映画を観ればだいたいわかるのとは訳が違うのだ。

 そんなわけで、この映画は、数少ないトレッキーのこれまたオリジナル
シリーズファン向けの映画だ。そうでなければ、膨大なDVDをこれから
購入して、比較的地味なスタートレックを好きになって勉強しようという
奇特な人のための映画である。
 ちなみに、映画は以上をクリアした人間が見ればそこそこおもしろい。

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