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May 25, 2009

映画評 スラムドッグ$ミリオネア

お勧め度 ★ ★ ★

 アメリカにいるとき、パセリに付いたキアゲハの幼虫(青虫)を育てたことがある。
キアゲハどこにいてもキアゲハで、同じ植物の葉を食べ、同じようなさなぎになり、
同じ模様の蝶になった。それに引き替え、人間の世界に拡散し、その食べ物や
生活様式の多様さといったらどうだろうか?本作品を観て、そのような全く関係ない
感想を持った。

 主人公(ジャマール)は兄のサリムと共にボンベイの貧民街に住んでいた。
インドでは有名な事件なのだろうか?ヒンズー教がイスラムのインド人を襲撃し、
2人は孤児となり彼らに付いてきたラティカという同世代の少女3人で乞食になる。
彼らはやがて、子供を乞食に仕立ててピンハネをするママンという悪党の元へ
連れて行かれる。

 歌のうまい少年は目をつぶして盲目の乞食に、少女はやがては売春婦に仕立
てるのだ。事態を飲み込み、逃げた3人だが、はなぜかサリムが飛び乗った電車
からラティカに伸ばした手を離したことによりラティカはそこの連中に捕まり、
兄弟は電車で街を離れる。それから兄弟は、盗みや詐欺を繰り返して生きていく。

 ラティカの事が忘れられないジャマールは、割のいい観光地のタージマハル近辺
での暮らしを捨てて、名称がムンバイになった旧ボンベイに戻ってくる。ムンバイで
盲目の乞食に出会ったジャマールは彼からラティカの居場所を聞き出し、兄と共に
彼女を救う。もとから凶暴性を身に持っていた兄は、やってきたママンを撃ち殺し、
庇護を求めるために地元のヤクザの元へ、そしてついでにジャマールから美しい
少女となったラティカを奪ってジャマールの前から姿を消す。

 ジャマールはラティカがクイズ番組ミリオネアを観ていたことを知っていたため、
彼女とのコンタクトをとるために番組に出場する。

 本作品は彼が番組において、無学問なのにも関わらず、次々と難問をクリアして
ミリオネアとなったシーンから始まる。なぜ彼が1000ルピーの肖像も知らないのに
アメリカ百ドル札の肖像が誰なのかをしっているのか?なぜ彼がラーマ王子の右手
に持っているものが何なのかを知っているのか?それらは回想シーンとして出て
くる。彼の人生での経験がたまたまこれまでのクイズ番組の構成と合致している
様がそこから判明する。さて、最後の問題、これに答えれば彼の賞金は倍になる、
そして番組をどこかで観ているはずのラティカとは会えるのだろうか~。

 オスカー8部門をとったほどの作品とは思われないが、確かによくできてはいる。
中身に沿った疑問を提示してしまうと、なぜ、非人間的な側面を多くかかえる兄貴は
最後になってそういう気分になったのだろうか?
 最後に踊りが出てくるところに本来のインド映画を感じる。できれば、登場人物で
踊ってほしかった。

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May 17, 2009

映画評 バーン・アフター・リーディング

お勧め度 ★

 コーエン兄弟は「ファーゴ」のようなしっとりとしたそれでいてユーモアの
ある映画も作るかと思いきや、ユーモアは多少あるが、なんともつまらな
い「Oh!ブラザー」のような映画も平気で出してくる。こういってはなんだが、
信用ならない監督である。本作は結論からはいると後者で、シナリオも
破綻はないし、俳優の演技もよくできてはいるが、全くおもしろくない映画
となっている。

 ストーリーはリストラされたCIA分析官(マルコビッチ)がその腹いせに
CIAの暴露情報も混じった自伝を書き始めるのだが、その奥さんは離婚を
考えており、彼のPC情報をひととおりダウンロードしている。そのCDを
離婚弁護士の秘書がスポーツクラブで落としてしまう。

 スポーツクラブでは、アホで人のいいチャド(ブラピ)とその上司で全身
整形を夢見るおばはんが中身を見て、とんでもない機密情報と勘違い。
そのデータをつてに、マルコビッチから金をせしめようと画策する。んで、
話がややこしくなるのは、マルコビッチの奥さんは連邦のSPであるジョー
ジ・クルーニーと不倫中なのだが、クルーニーは相当お盛んで、結婚
紹介所にも登録しており、そこにくる女性を食い物にしている。スポー
ツクラブのブラピの上司もその紹介所の常連で両者が出会うことで、
関係者の不思議な連環ができあがるというわけだ。

 この後は、ちょっとした出来事がごろごろところがり、数人の男に不幸
が降りかかるというのが今回の映画である。

 まぁ、各人の演技、特にブラピのクローゼットから出てきた笑顔は
すばらしい。リストラされるときのマルコビッチの演技も、SPのくせに
すっかり気が動転してしまっているクルーニーもよい。でも映画としては、
こじんまりとストーリーがまとまっているだけで、特におもしろくもなく、
何が残るでもなく、なんで映画にしたのかが、なぜこれほどの俳優が
そろったのかが謎の映画だ。
 男が軒並み貧乏くじ曳いているような所も、なんとなく気に入らない。

 客の入りも悪かったし、早々に上映終了だろう。

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May 05, 2009

映画評 グラン・トリノ

お勧め度 ★ ★ ★ ★

この映画をもって引退との情報もあるクリント・イーストウッド。クリント・イーストウッドに
ついては西部劇も警部劇もどちらも全く興味がなく、映画監督としてのイーストウッドの
方がよっぽど身近なのだが、本作も安定してすばらしい出来映えである。
チェンジリングと立て続けに上映されているが、どういうペースで作成したのだろうか?
ようわからん。

舞台はアメリカの中西部(要は保守的な田舎ってことだな)。主人公の奥さんの葬式
から始まる。この映画は常に生と死、世代というものを感じさせるが、振り返ると
見事な導入である。
主人公は朝鮮戦争で戦ってきたトラウマをかかえ、戦後はフォードの組み立て工として
働いてきた頑固な旧世代のじじいである。息子はトヨタのディーラーで、今時の孫とも
なじめず、奥さんが死んで以来、ほぼ天涯孤独の身の上である。それでも息子は
多少なりとも電話したりしており、自分から見れば、息子もそれなりにえらい。

住宅地もかつては同世代の人々が住んでコミュニティを作っていたのだろうが、
だんだんと白人の住む街から有色人種の住む街になっており治安も悪化、
その辺も主人公は気に入らない。葬式の翌日は隣のベトナムでアメリカ側に
ついたことにより迫害を恐れてアメリカに移住したモンタニャードであるモン族だか
ミャオ族だかの一家が子供の誕生のお祝いをしている。

そこの子供の一人である、タオはおとなしい若者であるが、同族の不良から仲間に
なるようしつこく誘われており、その入隊?儀式として、主人公の愛玩する72年型
グラン・トリノを盗み出そうとして失敗する。
盗難失敗の償いにタオは主人公のところで無償奉仕することになり、一方、不良
どもからは制裁の対象となっていく。


ここからが感想。

見終わり、なるほどね、と納得する。主人公は、式が近いことを血を吐くことで
示しており、結果としてそれが観客にとっても救いになっている。うまく相手に
発砲させるためにはそれなりのテクが必要であり、「あれ、乗り込まないのかな?」
「何でライターくれ、なんて間抜けな台詞を言うのかな」というのがすべて計算尽くで
相手を必然的に等言う鼓動をとらせるような緊張を強いていくステップとなっている。
この話の問題は、タオがどうしてそこまでいじめられなきゃいかんのか?という点の
説明が中途半端な点で、いじめに理由がないとしてもこの制裁はいくらなんでも
常軌を逸している。とはいえ、なんともよくできた映画で、見てよかったと思える
作品である。

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