映画評 ディファイアンス
お勧め度
★ ★ ★ ★
ナチスから逃れ、森で何とか暮らしていた人たちの話。
ヨーロッパは森だ。
20世紀において、森に隠れれば何とかなる、という事態は日本人には、
少なくとも自分には理解しがたい。
しかしながら、ヨーロッパというのはやはり森なのだろう。赤ずきんちゃんは
おばあちゃんの家に行くのに森を通っていき、オオカミに見られる。
その辺を映画化した「ブラザーズ・グリム」も森だらけの映画。ドイツの地名
にある~バルツは森の意味だと言うし、どうやら日本の里山的なイメージと
はずいぶん違う植生がそこにはあるのだろう。
主人公のビエルスキ3兄妹はベラルーシに住むユダヤ人だ。ナチスの
侵攻から逃れるため、家族を殺された時に森に逃げ込み、そこで略奪
生活と自活を始める。なぜかはわからないが彼らの周りに段々とユダヤ人
が集まり、一大集落となる。近くに展開するソビエトの赤軍と微妙な距離を
取りながら(弟は赤軍に行くが)、彼らはなんとか生き残るすべを模索して
いく。
人が増えれば口が増え、それに伴い必要な食料が増え、そしてそのこと
はドイツ軍や地域の住民を刺激する。森に深く入れば安全は高まるが、
食いつなぐには集落に寄生するしかない。そのような状況で綱渡りの
生存を続けていく。
腹が減れば諍いは高まるし、女をめぐる問題も発生する。薬の不足や
迫り来る冬は大きな脅威だ。
本作のすごいところは、きれい事がほとんどないことだ。
主人公は憎しみに任せて裏切り者のユダヤ一家を惨殺するし、
ユダヤ人に好意的な農家の主人は殺されてしまう。かよわき群衆も
たまたま捕まえたドイツ兵を集団で殴り殺す。人間として平等なはずの
赤軍にも人種差別はあり、ユダヤ人集落の中でも追いつめられた
人間の醜さは存分に発揮される。そのような中、なぜか主人公は
リーダーになり、リーダーとしての決断を下していく。自分が生き
延びたいという欲求以上のモノを持ち得ないような状況で、なぜに
大勢の言ってしまえば生存にとって足手まといな人々を迎え入れ
られるのか?人間性の問われる映画である。
本映画の映像はまさに当時そのものだそうで、撮影現場を見に
来た当時の人々が、あまりの再現性のすごさにそのまま希望して
エキストラになったそうだ。森の映像はいつの季節もとにかく寒
そうで、また、生態系の貧弱さを感じる動物に乏しい世界だ。
ヨーロッパは森かもしれない、だがその森は清貧な美しさで、
決して豊かさややさしさは感じられない。
ビエルスキの集団は映画が終わった後も2年間森に潜み、その中で
さまざまな社会的な施設を営んで人間としての生活を築いていった
そうだ。映画の最後に、実際の当人たちの写真が映し出され、
非常に感動的である。


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